「リゼンブ〜ル、リゼンブールだぁよっと」

小さな駅に熟年の駅長独特のアナウンスが流れる。

「駅長さんこんちはー」

「よう・・・・ってありゃ?弟はどうした?」

汽車から降りて来たエドワードが挨拶すると、目立つ鎧姿が無い事にあたりを見回した。

「セントラルに置いてきた。オレは誘拐されてきた」

「?」



「なあ、少佐。何企んでんのかいいかげん話せよ」

アームストロングにセントラル駅まで強制連行されると、そこには何故か朝出かけていったが待っていた。何がどうなっているのか解からないまま、エドワードは汽車に押し込まれリゼンブールまで戻って来たのだった。

「多分もうすぐわかると思うわ」

「む!いたな」

が苦笑していると、アームストロングが見覚えのある姿に目を留めた。

「どうもアームストロング少佐、中佐。−と、よう大将」

「??なんでブレダ少尉?」

思いがけずその場にいたブレダにエドワードは目を点にした。










第35話 小さな人間の傲慢な掌










陽炎立ち昇る灼熱の砂漠を、5頭の馬が進んでいく。

先頭を行くのは、ブレダの後に更に合流したミスター・ハン。独特のなまりがシン人であろう彼は、出入国コーディネーターと言えば聞こえは良いが、早い話密入国の仲介者だ。

次にブレダが続き、更にその後ろには、エドワード、アームストロングが並んでいる。

ひっきりなしに暑いと繰り返すエドワードは、”若者がだらしない”とアームストロングにたしなめられたが、機械鎧(オートメイル)の手足を持つ彼はどうしても熱がこもるためそれも仕方の無い事だった。


、大丈夫か?」

エドワードは隣のに目を向けた。
すると、日差しと砂避けのため目深にかぶったフードから彼女が顔を覗かせる。サラリと流れ落ちた淡い金色と、彼女の乗る青毛の馬のコントラストが目に眩しい。

「なんとか」

”エド程じゃないわ”と付け足した彼女もやはりこの暑さには相当参っているらしい。


そんな会話をする二人と自分も含めそろそろ限界なブレダが目的地はまだかと聞くと、ハンはもうとっくに国には入っているとエドワードに望遠鏡を渡した。

「あれがクセルクセス遺跡の中心。かつて栄華を極めた王国の市街地も今は東西を行き来するキャラバンの中継地になっているだけだ」

丸く切り取られた望遠鏡越しのエドワードの視界には、点在する瓦礫の先にまだ形を留めた遺跡が映る。どうやらあそこが終着点らしい。





馬から下りた一行は待ち構えていたフーと合流し、とりあえず休憩も兼ねて水場へと異動した。

「クセルクセスってーと”東の砂漠の賢者の話”でしか知らなかった」

「東の賢者カ?」

「そう。オレ達の国に錬金術を伝えた術師のおとぎ話」

エドワードは体を拭きながら簡単に説明する。

その昔、一夜にして滅んだクセルクセス王国の生き残りが建国から間もなかったアメストリスに流れ着いて錬金術を広めた。それは錬金術をを学ぶ者なら誰しも知っている伝説だ。

すると似た話はどこにでもあるものだと、フーが”西の賢者”について話し出した。

シンから見て西方からその錬金術師が来てからシンの錬金術は飛躍的進歩を遂げたのだという。


「我々は彼の事を尊敬を持って呼んでいル。”西の賢者”・・・ト」

フーがそう話を締めくくる頃には、一向は水場を後にして遺跡の中央、神殿の辺りまで進んできた。

「その賢者の出身がここだったと?」

「そう伝えられていル」

(なるほど・・・・それでか)

アームストロングとフーの会話に、エドワードは以前リンがクセルクセスを遺跡を見ておきたかったといっていたわけが解かった。


「うおーすげー神殿」

神殿の最深部にあたるのだろうか、崩れかかってはいるがドーム上の高い天井からは光が差し込み、いまだ荘厳さを失わない内部を照らし出していた。



その装飾や技術の巧みさを誰もが驚いている中、エドワードは壁画のような巨大なレリーフに気付いてを引き止めた。

「・・・凄い・・・」

はエドワードに示されたそのレリーフに、何よりも先に感嘆の声を上げた。

身長の何倍はあろうかという高い位置に描かれたそれは、一見して練成陣のようにも見える。二人はまるで魅入られたようにその場に立ち尽くした。

「何をしていル、こっちダ」

「あ・・・うん」

だが、フーに呼ばれて二人は後ろ髪を引かれながら彼を追いかける。


「ずいぶん奥まで行くんだな」

「女一人目立つ所にいては危険だからナ」

フーは神殿を抜け、おそらく街であったであろう場所をどんどん置くまで進んでいく。

「女?」

「ここダ」

答える代わりにフーが廃墟の中に踏み込むと、エドワードの脳裏にロイの言葉が蘇った。

「あ・・・・」

「エドワード君!?」

「!」

そして彼が確証に至るよりも早く、聞き覚えのある声が振ってきた。

「・・・・・・ンの、クソ大佐・・・!!」

一行が視線を上げれば、そこには死んだとされたロスが立っていた。






も最初から知ってたのか?」

ロイがロスの逃亡を助けるために実行した計画の全貌を聞いて、エドワードは自分の隣で瓦礫にちょこんと腰掛けたに目を向けた。

「ううん、気付いたのはここに来る直前よ。ごめん、黙ってって」

「いや、気にすんなって!」

どこで誰が聞いているかもわからない以上、うかつに言わないのは当然だ。


「さて・・・とにかく情報が欲しい。こっちは大佐が得た情報を預かって来た。お互い隠し事なしで情報交換といこう」

話が一段落したのを見届けると、ブレダはロイのものと思われる分厚い手帳を取り出した。



「こんな感じか?」

エドワードが第五研究所の一件から今までの事を話していく中、アームストロングはその端々で出てくる言葉を頼りに3人の似顔絵を書き上げた。

「そうそう」

の記憶も取り込んだ事で、そこにあったのは過去彼らが関わったウロボロスの一味、ラスト、エンヴィー、グリードの肖像画ともいえるほどそっくりな絵だった。

「このエンヴィーってのがエドワード君を運んで来た人ね」

「このボンキュてのが”ラスト”?」

人造人間(ホムンクルス)など本当に存在するのカ?」

「そう言いたい気持ちもわかるんですが・・・」

それらの絵とエドワードの話を比べて一同はそれぞれの感想を持ちながらもうーんと頭を捻る。

「そのダブリスのグリード一味皆殺しってのも気になるな。それとドクター・マルコーにも一度会ってみる価値がありそうだ」

やはりブレダも殲滅については疑問を持ったらしい、エドワードは無言で頷く。

「でもこうして考えれば考えるほど・・・・・・・」

ロスは至極真面目な顔で顎に手をやった。

「賢者の石とか無関係よね私。なんで巻き込まれなきゃならないのよ」

最もなその言葉に一同は一斉に目をそらした。

「本当にヒューズ准将を殺してないんだろうな?」

「当たり前でしょう!!」

ブレダに疑心の目を向けられて、ロスは即座に怒鳴り返した。

「そうか。よかったよ、こいつを使う事にならなくて」

するとブレダはほっとしたかのように嘆息して、背後に隠し持っていた銃を持ち出した。

「万が一ロス少尉が犯人だったら情報を訊き出した後に撃ち殺すよう大佐から命じられてた」

「・・・・・・・・」

物騒なブレダの物言いに、一同は息を呑む。


「ヒューズ中・・・・・・・准将・・・本当に死んじまったんだなぁ・・・」

改めてその事実を認識して、エドワードはやるせなく俯いた。

「オレ本当に奥さんになんて言っていいかわかんなかった」

「夫人に会ったのか?」

「事件のあらましを説明して、その・・・謝りに・・・」

「・・・・の馬鹿!!」

「でっ!!」

エドワードが言い終える間もなく、その脳天に強烈なブレダの一撃が食らわせられた。

「被害者家族に事件の裏側を教える事がどんな危険な事かわかってんのか、ええ、この豆はよ!!」

ぎりぎりと締め上げられて、エドワードはようやくはっとする。

「あーもう、後先考えねー馬鹿ガキは嫌いだ!!」

”信じらんねー!!”と頭を抱えて絶叫するブレダに、エドワードは思わずだってと口走った。

「で?何て言われた?」

「あう・・・・」

だが青筋を浮かべたブレダに聞き返されて言葉を詰らせた。

「・・・・・・”納得する方法で前へ進め”って言われた」

「どうする?」

このまま進むべきか否か、アームストロングの言葉はエドワードもずっと考えていた事であった。

「禁忌を犯したオレ達に協力してくれる人達がいる。怒ってくれる人がいる。だまって支えてくれる人がいる。二人で元の体に戻ろうと約束した弟がいる。そして事件の事を知ってしまって後戻りできない状況にある」

エドワードはぐっと手を握った。

「ならば前に進むしかないじゃないか!」

そう力強く言い切った彼の瞳は、かつてロイが評した”焔の点いた眼”だ。あの時よりも一段と輝きを増した金色の焔が、その意志を物語っている。

「もう誰一人失わない方法で、もし目の前で誰かが犠牲になりそうになったらオレが守る」

エドワードは眼下に両手を広げる。

「難しい事かもしれない。この手で守れるものなんて自分の身一つで一杯なのに、更に他の物まで守ろうだなんてただの傲慢かもしれない。でも身の程知らずと言われようとも今のオレにはこれしか思いつかない」

二つの掌は思っていたよりもずっと小さく頼りないように思えた。だが、その場の四人の”大人”とは黙って聞いていてくれている。

「・・・・・・やっぱオレ馬鹿か」

エドワードは少し照れくさくなったのか両眉を下げる。

「ああ、まったく馬鹿でごーまんなガキだ」

「ブレダ少尉!」

配慮が足りないとロスは声上げたが、次の瞬間にはブレダは笑っていた。

「だがそういう真っ直ぐ馬鹿は嫌いじゃない」

”せいぜい気張れや”と言われてエドワードは苦笑した。






一同は一番最初に降り立ったキャラバンの休憩地点まで戻って来た。シンへ向うロスを見送るためだ。

事実はどうあれ死んだ事になっているロスがアメストリスに戻るわけにはいかず、かといってこんな場所にいつまでもいるわけにもいかない。

「せめておぬしの両親にだけでも無事を知らせておくか?」

準備も整い間もなく出立と言う所で、アームストロングはそう言った。

「いえ、万が一私が生きている事が両親の口から漏れれば取り返しのつかない事になりますから」

ロスはしばし思い悩むようにしていたが、顔を上げそう言い切った。

「人を殺した娘を持った親として辛い日々を送ることになると思いますが仕方ありません」

それは苦渋の選択なのだろう、ロスは拳を握った。

「ブロッシュ軍曹も心配して落ち込んでおったが」

「ダメですよ!!軍曹はすぐ顔に出るから教えちゃダメです!!」

ロスが大慌てでそう言うと、エドワードは苦笑し、アームストロングは大きく鼻をすすった。

「アームストロング少佐、ブレダ少尉、マスタング大佐に伝えていただけますか。あのままだったら策にはまって殺されていた私を生かして逃がしてくださった事に感謝します。もし有事の際は遠慮なく呼び戻してください」

ロスはそこで敬礼をした。

「恩に報いるためその時が来たら命をかけて働かせて頂きます!」

「うむ!我々もおぬしが大手をふって帰ってこれる国になるようつとめよう」

ロスの意志に敬意を表し、アームストロングの言葉に合わせてとブレダも敬礼した。その様子を見ていたエドワードも、軍人ではないが敬礼しようとする。

「!」

だが、ロスは笑顔で手を差し出した。

「エドワード君、元気でね」

「・・・・ビンタの借り、返せなかった」

「また今度ね」

躊躇いがちに手を握ったエドワードにロスはにっこりと笑んで見せた。

中佐」

そしてロスはエドワードの手を離すと、のほうへ一歩歩み寄った。

「お元気で、ロス少尉」

「はい、中佐も。無茶な事しちゃだめですよ?」

思いがけずたしなめられてしまった事にが苦笑すると、ロスもつられて笑った。二人は一度強く抱擁を交わす。

「また、会いましょう」

「はい、必ず」

お互いの背を強く抱きしめて、は目を伏せた。別れを悲しむ涙はいらない、必ずまた会えると信じているから。



やがて砂煙を上げ、ロス達のキャラバンは砂漠の向こうへ消えていった。










「さて、我々も早々に戻らねばな」

ロス達が完全に見えなくなってしまうと、アームストロングがそう促した。

「あ!待った!」

すると、エドワードは気がかりを一つ思い出して待ったをかけた。

「なんだ?」

「ちょっと気になることがあってさ。ここで待っててくれないか」

「もしかしてさっきのレリーフ?」

「ああ、も一緒に来てくれるか?」

が言うとエドワードは頷いた。神殿で見かけたそれに二人とも似たような興味を持ったのだ。無論が断る必要はない。

「?」

何がどうなっているのか解からないアームストロングに、はすぐに戻りますと残してエドワードの後を追った。






二人は再び神殿のレリーフの前に立ち、それを見上げる。

「どう思う?」

エドワードはレリーフを見上げたままに問い掛けた。

「絡み合った二頭の竜に・・・太陽が五つ・・・周りに書いてある古代文字が構築式だとしたら練成陣にも見えるけど、少し違うみたいね」

「やっぱもそう思うか。第五研究所で俺が見た練成陣に似てるんだ」

二人はもっとよく見ようと、少し場所を移動する。だが、レリーフの上部は自然にかそれとも人為的かは解からないが欠けてしまい、それ以上読み取る事が出来ない。


ーと、その時。

「エド」

「ああ、わかってる」

背後に気配を感じて密やかにが言うと、エドワードも小さな声で頷いた。そして小さな風を感じた瞬間、二人は同時に左右に身を避ける。

「!?」

襲い掛かってきた何者かが避けられた事に驚いた隙に、エドワードは腕を掴んでその体を地に叩きつける。

「何か用かい?」

「あっ・・・・ぐ!!」

強く腕をねじり上げられて、襲い掛かってきた男は苦悶の声をあげた。

「言っとくけど金は持って・・・・・・イシュヴァール人か・・・・・!!」

エドワードは言葉の途中で自分を見上げた男の赤い目に歯噛みした。

「「!」」

気付けばいつのまにか数人のイシュヴァール人が囲むようにして姿を現していた。男を押さえつけたままのエドワードに代わり、がいつでも動けるように身構える。

「悪いが大人しく捕まってくれないか」

だが、彼らが発した言葉は論外に穏便な物だった。

「あいにく身代金要求しようにも両親いないんだよねオレ」

「金ではない」

エドワードは皮肉をこめて言ったが、顔の半分に重度の火傷を負った男が静かに歩み出た。

「イシュヴァール閉鎖地区の解放、およびイシュヴァラの聖地を踏みにじる国軍の撤退を要求するために人質になってくれんか少年、娘」

「そんな事しても無意味よ。軍はそれくらいの事で動かないわ」

自らの身を置いてはいるが、こう言うときに軍が冷酷なのはよく知っている。

「世論は変えられるかもしれん。子供を見殺しにしたアメストリス軍・・・とな。イシュヴァール内乱も引き金は一人の子供の死だった。何が歴史を変えるきっかけになるかわからんのだ、娘よ」

とエドワードは険しく眉を寄せたまましばし緊迫した空気が流れた。

「やめんか見苦しい」

だが、突然聞こえたかすれた声に全員の視線がそちらを向いた。少年に支えられて歩いてきたのは右目を眼帯で覆った老人だ。

「シャン様・・・」

「馬鹿者がイシュヴァラの名を辱める気か」

どうやらこの老人は僧侶か何かなのだろう。たちを襲った男を一括する。

「君、その人放してあげて。もう襲ったりしないから」

少年に言われ、エドワード眉を寄せたままようやく男を解放した。

「すまんね。若い者達が無礼をはたらいて」

「いや」

エドワードは服を調えながらシャンに首を振った。

「イシュヴァール人がアメストリス人(オレたち)を憎んでるのはよく知ってる」

「ああ。我々の全てを奪い、この荒野へ追いやったお前達を許す事は出来ない」

「では何故その私達を助けたの?」

シャンの言葉には僅かな憎悪が含まれていたが、行動との間に矛盾が生じる。

「全てのアメストリス人が悪い奴ではない事を知っとるからじゃよ。奴らに命を助けられた事がある」

「へえ・・・!」

意外な事実にエドワードは目を丸くした。

「シャン様も僕もあの内乱で死にそうな怪我をした時、アメストリスの医者に助けられた」

するとシャンの後ろに控えていた少年が話し出した。

「イシュヴァールがあんなになってしまって正直君達がにくいけど、今僕が生きていられるのもその医者のおかげだ。全てを憎む事はできない」

「・・・間接的にオレもその医者に助けられた事になるのかな」

エドワードは先ほど自分達を襲った男を振り返った。

「医者か・・・オレの知ってる医者夫婦も内乱の時イシュヴァールに行ってたよ」

「医者夫婦って・・・・」

少年とシャンは驚いて顔を見合わせた。

「ひょっとしてロックベル先生か!?」

「え!?知ってんのか?」

ロックベルといえばウィンリィの両親だ。まさかその名が少年の口から出るとはエドワードも思わなかった。

「知ってるも何も僕達を助けてくれたその先生だ!」

嬉しそうに言う彼にエドワードは目を瞬かせる。

「君先生の知り合いだったのか!こんな所で思わぬ縁だ!”私達には君くらいの年の娘がいるんだ”って親身にみてくれたよ。ずっとお礼を言いたかった!」

「そうか・・・ロックベルのおじさんとおばさんが・・・」

シャンが言うには、イシュヴァール殲滅の命が出たあとも最後まで人々を助けていたらしい。二人の善行を聞いてエドワードは表情を緩めたが、その分気がかりな事が一つあった。

「・・・・・・・・どんな最後だった?」

そう言うと、シャンと少年が言葉を詰らせた。

「ロックベル夫妻は・・・・」

シャンは苦々しげに言葉を搾り出す。

「助けた患者に・・・・イシュヴァール人に殺された」

「・・・そんな、理不尽な事があるかよ・・・・・」

「すまない。我々はあれを止められなかった」

「どこのどいつだ」

非常な現実に、エドワードは表情を一転させ歯を噛み締めた。

「顔は包帯だらけでわからなかった。右腕に入れ墨のあるイシュヴァールの武僧だ」

はシャンの言う人物に一人だけ心当たりがあった。エドワードも気付いただろうが、彼が何も言わなかった以上あえてその名は口に出さない。



「帰るのか」

「ええ、皆を待たせてるから」

エドワードとが黙って神殿の階段を下りていくと、シャンが二人を呼び止めた。

「もし機会があったらロックベル夫妻の墓前に報告をしておいてくれるか。感謝と、謝罪とを」

「わかった。必ずするよ」

そういい残して、二人は神殿を後にした。










再び砂漠を渡り、ようやくリゼンブールに戻って来たとエドワードは、セントラルに戻るアームストロングたちに別れを告げ、田園地帯を歩いていた。機械鎧(オートメイル)を直す前に、ロックベル夫妻の墓に寄っていこうという事になったからだ。

「あれ、あそこエドのお母さんのお墓よね?」

墓地が近づいてくると、は以前訪れたエドワードの母、トリシャの墓前に佇む人影を見つけた。

「誰だ?・・・・・・・!」

知り合いが墓参りにでも来たのだろうかとの示した先を見ると、エドワードはその人物の後姿に目を見開いた。

(まさか・・・)

そして気付いた時には走り出していた。ただ事ではない雰囲気を感じ取ったもその後ろに続く。

(うそだ・・・まさか・・・・・・そんな・・・)

記憶の中のある人物の面影が、その後姿に重なる。エドワードは否定しながらも一気にトリシャの墓まで駆け抜けた。すると、気配に気付いたその人物がゆっくりと振り返った。


それは10年前のあの日、自分達家族を置いて出て行った時と全く変わらぬ姿の父、ホーエンハイムだった。





to be continued





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あとがきという名の言い訳 vol.35

ーと言うわけで!ようやく10巻終了です、いやあ長かった(笑)

原作で「小さな人間の〜」の回のエドって本当強いな〜と書いてて実感しました。
立ち止まってた分、こう一気に成長して前に進むという感じが!!ある意味そこが嬢の違いかもしれないと思ってみたり。
彼女の場合は、振り返っては少し戻り、進んではまた振り返り、三歩進んで二歩下がる(阿波踊りかよ・爆)・・・と言う感じなので。あ、いやでも、見た目同じ事繰り返して全く進んでないように見えても、彼女も一歩ずつ、本当に少しずつだけど確実に前に進んでますよ(笑)

些細な事ですが、クセルクセス遺跡での会話で、エドの話を聞いているとき”4人の大人”と嬢を別けたのは私的に結構大きな意味があったりします。

ヒロインの18歳と言う年齢は子供と大人の中間の、本当に微妙な年齢だと思います。人によってはもう大人かもしれないし、子供かもしれない。だからあえて彼女の場合は”子供”に留める事にしました。
個人解釈で難なのですが、神埼的には、鋼世界の”大人”は”子供”の破天荒で無茶な行いをなんだかんだといいつつ見守ってくれてる人達と定義してます。(まあロイもかなり無茶やってますがそこは突っ込み無しの方向で・苦笑)

それはやっぱり年齢を重ねているからこそできる事で、彼女には出来ない事をやってくれる人達。そう言う意味で、多分このサイドでは連載の最後まで、いろんな意味で成長はしても、彼女を真の”大人”にすることはあまり考えていません。そこも軍部サイドとの差・・・かな?お暇でしたら比べてみてください(笑)

書いた本人が言うのも難ですが、読み直すと実はエド以上に無茶な事をやってるんですね彼女(笑)

実際、彼女にはエドより年上の分、しっかりしなきゃという意志があります。
ですが、連載の第一部のほうで彼女も認めてましたが、無理に”大人”になろうとしてた分、逆に押さえつけられてた子供の一面、頭は良いのに無茶苦茶なとことか、自分を省みないところとか・・・が暴走しがち。しかも最近では色々と思うところが自分の中で反発しあって、自虐的になってみたり開き直りかけてみたり・・・。
そんな色んな要素が交じり合ってるからエドよりも相当危なっかしくて、読んでてイライラしてしまうときがあるかもしれません(私も結構そう言うことありました・苦笑)

そんな訳で、彼女も他の”大人”から見れは立派に”子供”です。
大人びたというよりは器用貧乏の感情表現がある意味不器用すぎる子供(複雑です・笑)でも、それが彼女の人となりだから、そこら辺を消してしまうことなく、最後まで走っていって欲しいな〜と言うのが本音です。
まあ、書いてるのが神埼な以上どうなるかは解かりませんが(苦笑)

ーと、たまには真面目に語ったらなんだか長くなってしまいましたが、今回のあとがきはここら辺で。