不規則なリズムを刻む、耳障りな水滴。





それが街路樹を濡らす日は、私は不本意な名前で呼ばれる。





だからそんな日はどうしても憂鬱だった。














Rainy day















時折窓をうつ小さな音に、浅い眠りの淵にいた私の意識は呼び戻された。


断続的に続くノイズにも似たザーっと言う音。それに加え、たまに思い出したようにピチャン、ピチャンと跳ねる音。


ああ、今日も雨だ。


私は小さくため息をついた。


6月に入ったせいで、東部でも最近はよく雨が降る。


恐らく入梅も間近なのだろう、現にもう三日ほどずっと雨は降り続いていた。


恵みの雨とはいえ、こうも毎日続けて降られれば、いい加減に気も滅入るというものだ。


朝起きて外が薄暗ければ、なんとなくやる気が起きないし、何よりも憂鬱だった。


それは、以前部下に言われて以来すっかり定着してしまった、不本意極まりない仇名のせいなのだが。


うっかりそれを脳内で音に変換してしまった私は、深くため息をついた。




「ん・・・・・」


すると、それに気付いたのだろうか、私の隣で眠るが小さくみじろぐ。


起こしてしまったのかと思ったが、どうやら違ったようだ。


彼女は瞳を閉じたまま、まるで仔猫のように背を丸める。そして私のほうへ擦り寄ってきた。




ああ、そうか。


の様子で私はようやくその事に気付いた。


外で雨が降っているせいで、早朝の部屋の空気はひんやりとしている。


そういえば確かに私の裸の上半身も少し肌寒い気がした。


が私のほうへ寄ってきたのは、無意識に温もりを求めたのだろう。


自分では気付かなかったが、彼女からすると、私の体温は割りと高いらしい。




ぴったりと私に寄り添って無邪気な寝顔を見せるに自然と笑みが漏れる。


私はそっとシーツを手繰り寄せるとの肩にかけて、私も彼女を抱き寄せた。






「ん〜・・・ロ・・・イ?」


すると、今度こそ目を覚ましてしまったがぼんやりとした眼差しで私を見つめた。


昨夜愛しすぎたせいで、少々かすれ気味の声がその余韻を残してなんとも愛しい。


「おはよう、


私は抱き寄せた彼女の額に軽く口付けを落とした。


「おはよ・・・ロイ」


まだ覚醒しきらない意識のせいか、どこか舌足らずなその様子が可愛くて、頬に瞼、髪にまた額と顔中至る所に口付けの雨を降らせた。


「くすぐったいよ、ロイ」


そうするとはクスクスと笑って私の顔を両手で挟んだ。


「君が可愛いから悪いんだ」


私は笑っての首筋に手をまわしてその唇に口付けた。


「・・・ん」


一度軽く触れるだけのキスをして、その後何度もついばむように繰り返す。


そしてそっと舌を入れようとしたところで不意にが私の顔を押し返した。


「そこまで、調子に乗りすぎよロイ」


「・・・・キスしかしてないぞ」


「今までの例から言って、ロイの場合それだけで済まないでしょ。もう、昨夜のだけで私疲れてるんだからね」


は少し頬を膨らませて見せた。


「私としては全然足りないくらいなんだがね」


「あれ以上されたら私の体がもたないわ」


「いいじゃないか、久々の休みくらい」


そう、本当に私にとって休日は久しぶりなんだ。


だから少しでも長くと触れ合っていたい。


そう思って、もう一度彼女にキスしようと思って顔を近付けたら、鼻先をペチリと叩かれた。


「・・・・いたい」


「自業自得」


文字通り出鼻をくじかれた私はさぞかし情けない顔をしたのだろう。がまたクスリと笑った。






「雨・・・降ってるみたいね」


「ああ、せっかくの休日が台無しだ」


の言葉で忘れかけていたその存在を思い出させられて、私は少し不機嫌に声のトーンを落とした。


「・・・ロイは雨が嫌い?」


するとが不思議そうに私を見た。


「・・・好きではないな」


「無能って言われるから?」


「・・・・・・それもある」


と言うかほとんどそれが原因なんだが、あえて私はそこには触れないでおいた。


「ふーん・・・」


は、雨が好きなのか?」


「ううん、別に好きなわけじゃないわ、出かけるのが面倒くさくなるし、なんか憂鬱になるし」


はそんな風に言って一度窓の外を見やったが、すぐに私のほうを向いた。


「でも、ロイと一緒の休日に降る雨は好きよ」


「・・・・どうしてだ?」


私は眉を寄せた。先ほど雨が降れば出かけるのが面倒くさくなると言っていたばかりだと言うのに。


「だって、雨が降ってればずっとロイと2人きりでいられるじゃない」


はそう言って笑った。


確かに雨が降った休日は私はあまり外に出たがらない。


そうすると必然的に一日中家の中で過ごす事になるのだが、てっきりはそれを不満に思っているのだとばかり思っていた。


その不意打ちのような言葉に私はを抱きしめた。


「訂正しよう、私も君と一緒の休日に降る雨なら好きになれそうだ」


「単純」


は目を丸くしてから吹き出すと、私にぎゅっと抱きついた。


「でも嬉しい」


「私もだ」


私は笑いながらの柔らかな髪に頬を摺り寄せて、それから彼女の頬に口付けた。







ああ、それなら今日はいっそ雨がやむまで2人きりでずっとこうしていようか。



窓を打つ雨の音は相変わらず耳障りでうっとうしいが、が隣にいるなら、それほど気にならない。








たまにはこんな休日を過ごすのも悪くないかもしれないな。











END













あとがきという名の言い訳

6月1日、61(ロイ)の日ということで、6月末まで限定配布のフリー夢です。
やっぱり雨天無能だけど、ヒロインと一緒ならそれも良し〜とお約束な激短ssでした(笑)

フリー夢につきお持ち帰り自由ですが、著作権は放棄していませんので、サイトなどに転載する場合一言連絡いただけると幸いです。